2012年1月28日土曜日

象と亀の寓話

『私は人々が宗教的信仰を欲するような具合に確実性を欲した。確実性は他のどこよりも数学の中に見出されそうであった。しかし、私の教師たちが私に受け入れさせようとした多くの数学的証明は誤謬に満ちていること、そしてもし数学の中に実際に確実性が見出されうるならば、それはこれまで確実であると思われてきたものよりも堅固な基礎を持つ数学の新しい分野においてであろうという事を発見した。しかし仕事が進むにつれて私は象と亀の寓話を絶えず思い出す羽目となった。数学的世界を乗せる象を作り上げると、私はその象がよろめくのを見いだし、その象が倒れないように保つ亀を作ることに取りかかった。しかしその亀も象と同じく安定ではなかった。そして20年にもわたる非常な労力のあとで、私は数学的知識を疑う余地のないものにすることで自分にできることはもう何もないという結論に達した。』
バートランド・ラッセル,『自叙伝』


(P.J.Davis・R.Hersh"数学的経験",森北出版,1986,p.323)





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